【マナビノキ キャリアde 探究 いろいろなシゴトを知ろう!~学芸員ってどんな仕事?~(鎌倉市川喜多映画記念館)】

「みんな、映画ってどういうもので知る?」そう言って、まず見せてもらったのは、たくさんのポスターや写真集、雑誌やパンフレットです。子どもたちは「あ~、この映画知ってる!みたことある!」「あ!!これ昔のスターウォーズだ!」「なんか、この人のドレスきれい!」「この海の景色、すごくきれいだね~!」とアッという今に夢中に。そんな子供たちの様子を嬉しそうに見守る学芸員の増谷さん。
 「きっと昔の人も、今のみんなみたいな気持ちだったんだろうね。」そして、続けて「テレビやインターネットもない時代に映画を見た人はどう思ったと思う?」と聞かれると「映画を見てびっくりしたと思う」「外国はこんなのなんだ~!とか思ったかもしれない。」と子どもたち。「そう!映画は、昔の人にとっては『せかいのくらしや文化』を知る楽しみもあったんだよ。だから、川喜多夫妻はそういう世界中の色々なものを日本の人にみてもらいたいと思って、外国の映画を輸入する会社をつくったんだよ」と説明してくれました。「そっかぁ、今のぼくたちみたいに、ただアニメ見るとかじゃなかったってことか…」と子どもたちも妙に納得した様子。その後もスチール写真やプレス、ロビーカードなど珍しい資料も見せてもらい、ますます興味をもつ子ども達。「知りたい!」そう思ったときに、具体物に出会い、専門的な話を聞いたときに子供たちはぐっと集中する…この入り込む感じがいいですよね。
 続いて、展示室へ移動。たくさん展示されているポスターに「これ絵なの?写真みたい!」「なにこれ、すごく大きい!」キョロキョロとする子ども達。「それは、半裁っていう大きさのポスターだよ。他にも2シートや立看っていう種類もあるんだよ」と教えてもらいました。「こうやって『展示する』というのが、学芸員の大事な仕事の1つなんですよ」と話す増谷さん。
 そして映画館の裏方、上映室へ。「みんなフィルムって知ってる?」と言ってみせてくれたのは、とっても大きな映画のフィルム。「これで、何分ぐらいの映画だと思う?」と聞かれ、「うーん、映画だから2時間ぐらい?」と答えると「そうだねぇ、これで、15分ぐらいかな」ともう1人の学芸員の馬場さんが答えました。「え?じゃあ、映画の途中で入れ替えてるの?」と聞くと、「そう!2時間ぐらいの映画だとこのフィルム8個分だよ」と教えてもらい「えーっ」とびっくりする子ども達。
するとガラス張りの部屋の中で操作をしている人がこっちを向いて手を振ってくれました。「彼は映写技師さんだよ」「映写技師?」「そう、映画を映すお仕事をする人だよ」そう言われ、みんなで映写技師さんに注目すると、素早い手つきでフィルムをセットして見せてくれました。「映写技師って免許がいるの?」と質問すると「この映画のフィルムはね、昔はとっても燃えやすかったんだよ。だからフィルムを扱うのに昔は免許があったよ。でも今はほとんどデータ化されているからフィルムで映写するところは少なくなったけどね…」そう言いながら、フィルムの回る様子を見せてくれました。しばらく見とれていた子ども達。「こんな風に高速回転しながら映画って映すんだ…」そういって、実際の映像を観に座席へ…。「なんかちょっとぼんやりしてる気がするなぁ」「ちょっと暗い気がするね」「でも、なんか味がある!」なんて、口々に言います。
 そんな子供たちの様子を見ながら、ふと思います。私たちの時代はアナログからデジタル放送へ、カセットからCD、データ音源へと移り変わりを知っているけれど、乱れのないきれいな映像、音を当たり前に思っている今の子たちにとっては、ピントが合わない感じとかノイズとかは、単なる不具合としか感じないのかもしれないなぁ…って。この何とも言えないアナログな映像や音のやさしさや良さ、雰囲気を今の子供たちは感じ取る感性があるのかなぁ…って。これからどんどんAIとかロボットとか、そういう時代に移行していくんだろうけど、その中で「人にしかできないこと」を探していくこと、それを教育していくことが大事なんだと思います。正確で、精密で、効率的じゃない何か・・・反対を言うと、ミスもあるし、歪みやズレ、ノイズだってある。全く効率的、合理的じゃないかもしれない。でも、AIやロボットにはできないこと、感じないこと、それを守り、それを教育していかなければならないとなると、またまた難しいことだなぁ…と思います。でも、きっとそれは、このフィルム映画のように映写機を回している映写技師さんがいて、時々ピントがずれたり、カタカタ音がなったり、黒い点々がスクリーンに映るような、そういうことと関係があることかもしれない…人が人を喜ばせる何かだったり、そこにある思いだったり…。
 「さぁ、外へ行こう!」青空の元、大きな木々が立ち並ぶ小道をあがっていくと、立派な和辻邸がありました。「ここは、川喜多夫妻が外国のお客さんを招待した場所だよ。」その説明の通り、立派な日本家屋です。中に入ると、ちょうど庭を見渡せる場所に大きな机をイスがあります。そこに腰をかけた子ども達。「なんか落ち着く~」「景色がいいね~」と言うと、「きっと外国のお客さんもそう思ったと思うよ。春にはあの大きな桜の木が満開なる!」と増谷さんも馬場さんもとても自慢げです。囲炉裏や書斎、茶室など、ぐるーっと一回りしてみんなで縁側へ。「ここが好き!」そういって思わず足を投げ出す子供たち。
 最後はそこでお話を聞きました。どうして学芸員さんになったのか・・・増谷さんは映画がものすごく好きだったこと、映画監督になりたかったこと、実際に映画を作ったこと・・・映画と共にある今の仕事が楽しいことなどなど…。子どもたちも真剣に聞き、たくさんメモをしていました。
「ぼくたちの仕事は映画を上映すればいいってことじゃない。映画は映画を通して色々なことを伝えられるすごい力がある。映画の中に出てきたことに、興味をもったり、また調べたり・・・そこにまた時間をかけることも楽しい。そうやって映画を通して色々なことを伝えるっていうのが、ぼくたちの仕事なんです」と話してくれた増谷さん。
 そして、もう1つ、私が増谷さんの言葉で心に残ったのは「映画はみるんじゃなくて、体験する」って言葉。「映画は、その中の世界に入って、そこでたくさん体験する!だから、たくさんの映画に出会ったらたくさんの体験ができる。だからこそ、自分で見たい映画を選んで、券をもぎって体験しに行くんです。」って。
 子どもたちはこのワークショップで何を感じてくれたんだろう。
 「知りたい!やりたい!」のタネをマナビノキに育てよう!

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