【マナビノキ×井上蒲鉾店 姿を変える食品シリーズ・魚が変身!?さつま揚げづくりにチャレンジ!】(前編)

姿を変える食品シリーズといえば…大豆からお豆腐、牛乳からアイスクリームと挑戦してきましたが、今回は鎌倉の老舗の蒲鉾店、 鎌倉 井上蒲鉾店さんにご協力頂き、魚からさつま揚げづくりに挑戦してきました。
前半は井上蒲鉾店の代表の牧田さんから直接子供たちにお話を頂きました。「井上蒲鉾店の女将さんです」と自己紹介をしたとたん、子供たちは「どんなお話が聞けるんだろう?」とワクワクした顔をします。探究のはじまりです。
 学校でもそうですが、いつもの先生じゃない先生が出てくると、それだけで子供たちってわくわくするんですよね。「今日はどんな先生だろう?」「どんなお話が聞けるのかな?」って。そういった外部講師のことをGT(ゲストティーチャー)というのですが、総合の学習では「GTとの出会い」というのが、学びのきっかけになることもよくあります。
 まずは蒲鉾の歴史のお話。「魚のすり身を木の棒に付けて火で炙って食べていた」これが蒲鉾のはじまりと言われています。今のちくわのような形なのですが、この枝の先につけたすり身が「ガマの穂」に似ていることから、「がまのほ…がまのほ…がまほの…がまほこ……かまぼこ」となったという説もあるようです(よくある「がまのほって10回行ってみて!」っていうあれね/笑)
また、初めて歴史的文献に出てきたのは平安時代のお祝いの食事の献立の記録。そこに「蒲鉾」と確かに載っています。「みんなは蒲鉾食べることある?いつ食べるの?」と聞かれると「お正月かなぁ!」の返事に「よかった~!」と笑顔になっていた牧田さん。「昔から、蒲鉾はお祝いのときに食べられていたもの。だから今でもお正月とかお祝いの席で食べられるんだよ」と話があると、さらに「なんでお祝いの時に食べるんだろう?」という質問が‥。それはね「魚から細かい骨もぜーんぶとって、すり身にして何度も何度も水でさらして、練るっていうことはとっても大変だし手間のかかることなんだよ。手間がかかるっていうことは、高価なものっていうことなんだよ」と教えてくれました。「最近、お正月に蒲鉾を食べなくなった家庭も多いけど、お祝いの時には食べてほしいな」ともおっしゃっていました。
 私も子どもの頃は「伝統」とか「ならわし」とか「きまり」とか、なんかあまり好きじゃなかったんです。なんか昔っぽいし、同じことばかり繰り返して、いつまでもそこに留まっている感じがするから。それに加えて「きまりだから」って言われることが1番気に食わなかったんです。例えば「お節料理になんで蒲鉾入れるの?」って聞いたときに「昔から決まっているからだよ」って答えられたら「なんで決まってるんだよ!おかしいじゃん!今年からローストビーフにしてよ!」って思うかもしれないでしょ(笑)でも、もしそれを「蒲鉾ってね、昔はすごく作るのが大変で、貴族の人とか偉い人の食べ物だったんだよ。庶民はなかなか食べられないもの。だから1年の初めのお祝いだから、今でもそうやってお祝いの時に食べるんだよ」って答えてくれたら、「へぇ~、そうなんだ」って「ふむふむ、この味がね…」なんて思いながら、きっと納得して味わって食べるでしょ?…って思うわけです。
大人は見栄っ張りだから自分が知らないことは全部「それはきまりだから!」とか「やらなきゃいけないことなの!」とか、挙句の果てには「そんなの私だって知らないよ、でも昔からそうなんだから!」とか言いがちでしょ?そういう子どもの小さい「なんで?」に丁寧に答えたり「うーん、わからないから、一緒に調べてみよっか!」って寄り添えたりすると、その子の知的好奇心は育つだろうし、もののルーツに興味をもったり、なんでこれはこうなっているんだろう…って考える「くせ」がつくと思います。
何度も何度も水でさらし、骨や皮と取り除き、よく練ってねばりを出す…。私が今回、牧田さんのお話で驚いたのは、蒲鉾のあの「プリプリっ」とした歯ごたえが実はすべて天然のものだったということです。「最近では、でんぷんを入れたり、工場ですり身にされたものにつなぎを入れたりする蒲鉾も売られてますけど、井上蒲鉾では、魚を水で練って、そのタンパク質のみでつくっているんですよ」とおっしゃっていました。
「腰越の漁港からあがった石持という魚を使ってすり身をつくります。魚からすり身になる工程の途中でほかのものとか入ったら困るからね!魚から蒲鉾になるまですべて自分たちでこだわりをもってつくっているんですよ」と力強くお話して下さった牧田さん。井上蒲鉾店の「魚の顔を見てから」っていうキャッチフレーズにはそういう意味が込められていたのか!と納得しました。
 蒲鉾の歴史、鎌倉の歴史、武士の始まり…昔はたくさんあった「がまのほ」、因幡の白兎の話…などなど、蒲鉾にまつわる話を様々な切り口からのお話はあっという間でした。そして、そのお話を「へぇ」「そうなんだ!」「すごいね!」と言いながらメモをとり、うなずきながら聞く子供たち。さらに、その後ろで子どもたち以上に(!?)興味津々で話を聞くスタッフや大学生。
うまく言えないけど、これが「学びの空間」かなって思います。話を聞くことで、みんなの小さな「?」や「!」が1つずつ解明されたり、また話を聞きながら新しい「?」や「!」が生まれたり…。
 え!?「はやくさつま揚げ作って食べた~い!」って心の声は?もちろん聞こえてましたよー。
 「知りたい!やりたい!」のタネをマナビノキに育てよう!
後編へ続く…

0コメント

  • 1000 / 1000